2年半前、ニュージーランドに滞在していた時に、私にパーマカルチャーを教えてくれたレインボーバレーファームのホストマザーのトリッシュが日本全国にいる教え子たちに会いに日本に来ています。今週は仙台に滞在。仙台近辺に住むレインボーバレーファームファミリーが集まりました。久々に会って、近況を報告したり、去年突然旅立ってしまったホストファザーのジョーの思い出話をしたり、一緒に温泉に入ったり楽しい楽しいひとときでした。せっかくの機会なので世界で一番美しいパーマカルチャーファームと言われているレインボーバレーファームのことを少し書こうと思います。長くなるのでここからは興味がありましたらぜひお読みください。
虹の谷 レインボーバレーファーム ニュージーランド北島
ニュージーランド北島のマタカナという所にレインボーバレーファームという世界で一番美しいパーマカルチャーファームと言われるファームがあります。ここは去年亡くなったジョーとトリッシュが40歳の時に開墾からはじめたところです。はじめは二人でハウストラックというキャンピングカーで2年間電気なしで生活していたそうです。お風呂も外にあるバスタブで。でも満点の星空の下で入るお風呂はそれはもうロマンティックだったとトリッシュは言っています。上の写真は2006年に撮った母屋です。私が行った時はもう写真を見ても分かる通り楽園でしたが、つくっていく過程というのはほんとうに山あり谷ありの苦労もあったと思います。でもトリッシュはジョーと出会って一緒になってRVFを初めてからの21年間を“Amazing journey”と言っていました。はじめの方の頃の写真も見せてもらいましたが、ほんとうに20年でこれだけのことを自分たちで創り上げたのは本当にすごいことです。
何もない土地に移り住んで、開墾からはじめ畑、作業場をかねた住居、果樹園をつくり、牛、豚、羊、鳥を飼い、母屋をつくり、自給自足の生活をしてきました。彼らの20ヘクタールの土地は、元々森林だった土地を約90年前に牧場にするため焼き払われ、その後放置されていたため、一面ゴースという灌木に覆われていました。そのため表土はすっかり海に流れ出ていて、ジョーは土を取り戻すところから始めたそうです。この悪条件の土地を、パーマカルチャーの手法を使って、立て直すことで、一度壊された土地でも回復できることを示したかったのだそうです。下の写真はファームと、隣人の土地が一緒に写っています。何もない方がお隣さんの土地。レインボーバレーファームも21年前はこのように何もない土地でした。
それから毎年少しづついろんなものが作られていって、世界中の人々をひきつける場になりました。朝は何種類もの鳥のさえずりや木々のざわめきのオーケストラで始まります。土や緑の匂い、動物たちの鳴き声、花の香り。そこで採れた野菜や果物を使ったおいしいごはん、夜は一日の疲れを癒す手作りのビールに満天の星空。
これはワインの瓶などの廃材を使った美しい飾りの灯りとりの壁。
これは家の中から。ひさしの角度は、夏と冬の太陽の角度を考えて、夏は直接日が入らないように、冬は部屋の奥まで日が届くように計算されています。
トイレはコンポストトイレ。中にミミズがいて、すべて分解します。においもほとんどしません。2年くらいたったものを果樹園の肥料に使います。
身土不二
「私たちと土は二つに分かれたものではなくいったいである。」という意味の身土不二という言葉は、今の世界を見ていればよく分かる言葉です。私たちの住む地球、自然が病んでいれば、私たちの心身も同じような状態になります。だから、地球や自然へ向けて私たちがやっている良いことも良くないことも、結局は自分たちに向けてしていることになります。
限りのないエネルギー
パーマカルチャーでは様々なエネルギーを資源ととらえてあますところなく活用するようなデザインをしますが、ジョーは「ただひとつ、いままで見逃していたエネルギーがあった」と亡くなる前に言っていたそうです。彼の言葉をそのまま載せておきます。
I realize that I have ignored one very important form of energy -love.
It’s abundant and renewable.
“ love ”
これからの時代は、人との関係でも、経済でも、企業でも、NPOでも、この「愛」がそこにあるかどうかがひとつの判断基準になるかもしれません。「愛」から生まれたものはみんな美しいと思います。ジョーは見逃していたと言っていますが、気づかなかっただけで、彼は大きな愛だったと思います。じゃなきゃあんな場所はつくれません(笑)
ライフボートをつくろう
これはパーマカルチャーデザインコースの時に見せてもらったWWFのポスター。
かなり衝撃的な絵ですね。大きな船は今私たちが乗っている船。もうすぐタイタニックのように氷河にぶつかるかもしれません。その前にみんなで右のようなライフボートをつくって乗り込もう、という絵です。ライフボートに乗るのは簡単。まず考え方を変えてみること。便利になって、私たちが失って来たものは何なのか、何をしたら取り戻せるのかを考えてみること。そうしたら、それを今度は行動してみること。できることから。ひとりでも。
種まき
RVFには世界中から視察や研修生を受け入れています。日本にもたくさんの教え子がいます。ジョーとトリッシュは、自らのパーマカルチャーの実践の場であるファームをオープンにすることで、世界中に大きな可能性を持った種を蒔いてきました。私がパーマカルチャーのデザインコースを受けた時は約20名の参加者でしたが、コースの後、それぞれがほんとうに創造的な人生を歩いていっています。私が滞在していた同じ時期に滞在していた研修生のクリストフは、今オーストリアでパーマカルチャーの先生として、1回目のデザインコースを開催したそうです。こんなふうに彼らが蒔いた種は芽を出し、日々成長しています。彼らの教え子たちがまた種をまき、このムーブメントが森になって、どんどん広がっていって、パーマカルチャーの生みの親であるビルモリソンが言っていた「パーマカルチャーを創った目的は地球を森で覆い尽くすこと」が近いうちに現実になると思っています。